画家の死後:内藤瑶子の生前日記

自称絵描き|内藤瑶子のナイトー自身による、活動報告のブログです。/ 東京近辺で活動中。詳しいことはhttp://yokonaito.info/へ。

「俳句へのオマージュ」会期中です。|江戸の美意識と「野暮」

 「俳句へのオマージュ」は初めてご一緒する作家さんばかり、そして初めて展示させていただく画廊、そしてテーマが俳句。ちょっと意外なお誘いでした。
それにしても、いろいろと展示させていただく機会があるのはありがたいこってす!

 

そんな中、企画者・御子柴さんにご紹介いただいたのが一茶の句でした。

身近にある情景から政治風刺、動物とかのかわいいやつまで沢山あります。

自分はこれを選んでみましたよ。

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「ざぶりざぶりざぶり」F4、顔彩・モノタイプ・コラグラフ・和紙にパネル貼です。写真は家で撮りました。

ざぶりざぶりざぶり雨ふるかれの(枯野)哉

「享和句帖」

 

ほちやほちやと薮蕣(やぶあさがほ)の咲にけり

「文化句帖」

 

一茶は二万句もあるので、全集をパラパラしているだけではまったく決まらず。

オノマトペ系から選び、冬の雨の句はもともと描いてみたかったので……などなど、ネット検索なども駆使して調べました。

 

 

ちなみに、「ざぶりざぶり」は秋の句もあって、

ぬくき雨のざぶりざぶりと野分哉

「西紀書込」

 

ざぶざぶと暖き雨ふる野分哉

「西国紀行書込」

 などなど、けっこうざぶざぶ系は気に入っていた(?)ようです。

朝顔ホチャホチャは、もうそれだけで気に入りました。

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「ほちやほちや」F4、顔彩・モノタイプ・コラグラフ・和紙、2018

 

一茶俳句集 (岩波文庫)

一茶俳句集 (岩波文庫)

 

 

小林一茶 時代を詠んだ俳諧師 (岩波新書)

小林一茶 時代を詠んだ俳諧師 (岩波新書)

 

 
 キャプション表記などはは上のものを参考にしています。

特に岩波シンパというわけではないのですが、一般民向け通史の新書とかではお世話になってます。
『 時代を詠んだ〜』は文学としての一茶研究ではなくて、一茶と、一茶が生きた文化文政期の関わりが主な内容。

 

 この本によれば、どうやらこの時代は、いわゆる上流の「江戸っ子」文化ではなくて、「いまだ洗練されていない中・下層民の生活感を肯定する『野暮』に代表される文化」が主流だったそう。

一茶さんも自覚的に「庶民派一茶」としてセコセコ俳句を作っていたようです。

どちらかと言えば、ストリート系か。 

 

「粋(いき)」「通」とかじゃなくて「野暮」……。

 

自分もどちらかといえば野暮。

なぜ一茶を勧められたのか、なんとなくわかるな〜。

 

 

BSフジ「ブレイク前夜」|展示いろいろ

二週間に一度の更新を目指している本ブログですが、ご無沙汰しておりますm(._.)m
 
まず、先日お伝えしたBSフジのテレビプログラム「ブレイク前夜~次世代の芸術家たち~」の内藤放送回を番組オフィシャルYouTubeにアップしていただいたとのこと。
もしよろしければ観てやってくださいね🎶
 
 
私は一点物の版画(モノタイプといいます)を近年多数制作していまして、撮影セットにも多数貼り付けさせていただいています。
が、演出の都合上、既にお買い上げいただいていて私の手元にない作品のテスト刷り・見本の刷り(いわゆる本作品ではない、BAT版)を一部撮影に使用させていただいています。
 
お客さまから「一点ものだったよね?」と問い合わせもいただきました。
こちらもできるかぎりご連絡いたしましたが、念のためお知らせさせていただきますm(._.)m
 
ーー
 
ありがたいことに、今年も展示盛りだくさんの夏となりました。
 
ーーこれからの予定
●【グループ企画】:作品2点「俳句へのオマージュ」2018年6月2日(土)~10日(日)・ 東京九段耀画廊
 
●【二人展】:パークホテル東京 ART colours Vol.26 「ー井の底ー 成田朱希×内藤瑶子 展」
2018年6月11日(月)-9月2日(日)・パークホテル東京25F/31Fラウンジ(汐留)
 
●【グループ企画】:作品2点「中和・抽象・若手選抜展 ~CHU CHU SHOW~」2018年6月5日(月)~30日(土)・ 中和ギャラリー(銀座)
 
●【個展(内容未定)】2018年10月15日(月)~20日(土)・ギャラリーT-BOX(京橋)

 

 もしかしたら、1〜2企画くらい追加になるかもしれません。

ご都合よろしい時に、ぜひお越しくださいませm(._.)m

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これが「―井の底―」ビジュアル。この2作品を並べるって、なかなか考えが及ばない。デザインする人や企画する人のすごみ。脱帽です。
成田朱希さんは10年来のお付き合いがある大先輩。人人会でもずっとお世話になっています。二人展とはなんと光栄なことでしょう!
でも成田さんの絵に匹敵する作品を掛けるのは並大抵のことではないです。ギリギリまで制作が続きそうですね。毎日、気が気じゃねぇでやんす。
 
タイトルは「井の底」。テーマが夏らしくちょっとコワイ系になっていますね。
9月までのロングラン展示です。
 

人人終了・テレビ・絵を買ったその後

無常だね。

「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」かね。流れがはやすぎてやばい……(@o@) 

とりあえず、お知らせすべきなのは次の2点

  • 「第42回人人展」が無事終了。たくさんの方々のご協力なしにはできない展示です。尽力下さった方々、そして来て頂いたお客様に感謝とお礼を申し上げます。
  • BSフジにて毎週火曜 21:55~22:00 放送中のテレビプログラム「ブレイク前夜~次世代の芸術家たち~」に、縁あって出演させていただくことになっています。

    breakzenya.art

やっぱりテレビってすごい。私の活動にあまり興味を示さない息子だが、一気に尊敬ムードに。

絵に興味のない旧友、親戚連中などの「風来坊・ないと〜」への視線に変化が!

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人人展については、展示の様子などをまとめたものを編集中ではあるのですが。

特別陳列でフューチャーしていた物故作家は、おなじみの(?)中村正義(1924 - 1977)と佐熊桂一郎(1929 - 2006)。さまざまな方面の方々の協力あっての企画なので、そのセレクトにも当然さまざまな事情が絡みます。

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「第42回人人展」特別陳列「顔」の会場風景。一番右が佐熊桂一郎「巡礼の女」 油彩 F40 制作年不詳。

飾ることになった今回の佐熊作品は、絵の上からなにやら感情的に内容をうち消そうとするような筆致の入るもので、かなり重ねて描いたようなごそごそしたマチエールに産みの苦しみを感じます。

そういえば、某所でけっこう前に購入した佐熊作品。慌ただしすぎて未開封でしたが、出してジロジロしてみました。けっこう人人に出ていた作品に近いかも。

 

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これがその佐熊作品、その名も「女」。人人作家で学芸員の大野俊治さんに聞いてみると、これらの女性像は佐熊さんの奥様にも似ているみたい。

佐熊さんといえば、劉生に影響を受けた風の童女、名前を「おちかさん」という絵解きが有名。

江戸時代でも、近代化する過程でも、基本的に精神障害のある子供は納屋とか座敷牢などに匿うのが普通だったそう。佐熊さんが幼少期に伊東の温泉街の「座敷の隅」で会った「おちかさん」はそういった子だったようで、後の絵に大きく影響を与えているらしい。

 

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第33回展の図録が追悼陳列。これはおちかさんっぽい仕上がり。中にもかなり解説あり。この時はまだ小山さんもヘンリーさんも堀さんも松さんも生きていたんだなぁ。。

私の母親も、地方のいいお屋敷の中に座敷牢があるのを見たことがあるそう。意外と身近なんですね。

今では考えられないけれど、江戸時代から文明化するにあたって精神障害者はどんどん社会からは締め出される方向にあって、そのすべてのしわ寄せが家族への負担になっていたとのこと。(↓この書籍より↓)

狂気と犯罪 (講談社+α新書)

狂気と犯罪 (講談社+α新書)

 

 たとえば、佐熊さんと同じく人人会の創立メンバーだった斎藤真一(1922 - 1994)は瞽女さんを大きく打ち出した絵で人気を博していたけれど、佐熊さんの言説を見る限りでは、そういった事柄を強く訴求したかったわけではなさそう(?)。

ともあれ、この画家は本当にこういう絵ばかり。

ワンパターンを超えて、得体の知れない迫力のある画業です。

 

ちなみに、ためしに額を開けてみたらマット台紙で覆われて見えなかったところに新たなマット台紙と予想外に大きな画面が出現。どういうこと!?

よく見たら、水彩じゃなくて油彩。中はキャンバスになっていた。

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どういう経緯でこうなっちゃったの!?スゲー謎だが大事にします。



 

人人展近づく!図録にも寄稿。ギャラリートークもあるよ。

3月末。毎年恒例の人人展が今年も近づいてまいりました。

いろいろな雑務をこなしているメンバーも含め、もしかして俺たちパニクってる……?状態。

展示準備は何回やっても、なんだか慣れませんな。

「第42回人人展」
今年の人人展は、例年と場所・会期が変更となっております。ご注意ください。また、月曜日も開場しております。
会期:2018.325日(日)~31日(土)
時間:9301730入場17:00
会場:東京都美術館・1階 第4展示室(上野公園内)(地図はこちら

  • 会期中無休最終日は14:30入場、15:00まで

入場料:一般500円・学生300円
主催:人人会
図録:500円にて販売予定

 

さて、図録も刷り上がって参りました!

前回もお伝えしたとおり、今回の特別陳列「顔」のスピンオフで、図録企画もあります。

光栄なことに私もテキストを寄稿させていただきました。

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こんなやつです!


この展示は、人人会創立の中心的なメンバー・中村正義のエッセー「絵はすべて自画像」に着想を得て立てられた企画です。もともとは、我々のボスである画家・郡司宏が2014年の特別陳列でとりあげた文章で、今回はさらにその読解を推し進めるような企画になっているのだと思います。

 

しかし、この表題の「自画像」という言葉。中村正義はやや特殊な使い方をしています。

ほんとうに絵はすべて自画像かしら。

中村正義のこの文章は、自己表現とは何か?ということ、芸術はどうあるべきかということ、短い文章の中に簡潔にまとまっています。

ただ、これが燦然と輝く完璧な理論だ!ということではなくて、むしろ矛盾や問題系を大胆に含んでいるように思います。

私の文章は、それを丁寧に読んで考えてみようという内容になっています。

 

以下ウェブサイトより

◆内藤瑶子「『絵はすべて自画像』なのか :私に溶けゆく誰かの「顔」の新たなる鋳造について」
「絵はすべて自画像」か?ーーあまりにも表現主義的、心のリアリズムともとれる中村の文章をときほぐしながら、その問いに内包される個性表現と芸術との関わり合いを考えます。人人会において大きなテーマとされてきた個々の独立した創作活動と自由。これらの理想を担保する「個性」を漠然と賛美するのではなく、その複雑なありように目を向けたいと思います。

 

 この図録は、展示会場で500円で売ってます。

人人作家いろいろ盛りだくさん、もし良ければ購入を検討してくださいませ!

 

さらに初日、25日14:00〜はこの図録企画絡みで、同じく図録企画で論考を寄稿されている大野俊治さんと私でギャラリートークを行います。

他の作家さんにもインタビューしますので、出品者も集まる予定です。

物見遊山ウェルカム!ぜひ!

 

↓詳細は以下のページでお知らせしてますヽ(´▽`)/↓

hitohitokai.org

 

展示のお知らせ「物語の中の主人公達4」@ギャラリー枝香庵

ご無沙汰しております。2月は28日まで。慌てている方もいらっしゃるのでは?(私もです…)

しかし1ヶ月以上ぶりの更新か!いちおう月2回を目指している。( ̄▽ ̄;)


今年最初の展示はギャラリー枝香庵のグループ展「物語の中の主人公達4」3月8日(木)〜また本読み企画です。作品1点で出展予定です。

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その直後には毎年恒例「人人展」もあり、こちらの運営・準備作業も佳境に入ってきました。

今回は図録企画なるものにてテキストを書かせていただけることにもなり、

ギャラリートークも出演予定。

どうなるのおいら。。相変わらず玉砕モードでやってます。ガンバル!

いちおうリンクおば。是非是非!

hitohitokai.org

 

ーー

話をもどして、ギャラリー枝香庵のグループ展「物語の中の主人公達4」でとりあげるのは新美南吉 ごん狐です。教科書などにも収録される名作d( ̄  ̄) 

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右の加筆しない、刷りだけのも捨てがたいんだよなぁ〜🤔

「なにがしの物語の主人公を描く」ということは、絵の中にその説明を入れる必要があります。

今回だったら、「なんかの動物」ではなくて、少なくとも「キツネ」である必要がある。

私はあまり絵で説明をするということを志していないので、たいがい悩みます。

でも、時に応じていろいろな絵を描いていくことで、自分がどういったものを目指しているのかが詳細にわかっていく所もあります。

 

私はもともと美術を学んでいたわけではないし、作品を発表しながら絵を学んできたので、いろいろな機会があるということはありがたき幸せなのです。

 

新美南吉童話集 (岩波文庫)

新美南吉童話集 (岩波文庫)

 

 こういうのに入っています。でも青空文庫にもあります。

 

謹賀新年 / みなさまの健康と幸せをお祈りいたします!

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本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

ーー

大掃除ですっかり疲労困憊な幕開け。

でも、倉庫に溜まっていた不用品を処分して心機一転!

いい制作ができるといいなあ。

今年は自分にとってチャレンジングな展示企画が目白押しです。

しかも私は今年でサンサン33歳。

正念場ですな。ᕦ(ò_óˇ)ᕤ

ーー

今年が沢山の方々にとって良い年になりますように〜!

 

 

 

 

なんとかやってます / 近況

個展も終了して、もう一か月経ちました。はやいものです。
なんとか続けられそう。大きい展示が終わると「もう作家とかやめるかも…」ってくらい燃え尽きちゃう感あるんですけど、今回はちょっと目線が上むきです。


みなさまの応援・ご支援があってこそでございます!!m(__)m

改めまして、お客様・お世話になった方々に感謝申し上げます。

展示風景や作品などは、ウェブサイトに少々アップしたりしています!

yokonaito.info

ーー

最近は何かと文章をいじっていることが多くて、肝心の画像の締め切りなどを忘れていたりする。おいおい!

ーー

私が調査したりするのはほとんど物故作家(死んだ作家)。そういう興味の上で、知り合いのコレクターの方に手放した作品やコレクション放出・整理のことなどの話を聞くにつけ、作家の文章やまとまった資料・アーカイブがあるなしで、作品の見られ方が大きく違うことに大変な歯がゆさを感じてしまう。

特に、反アカデミズム系の画家は作品についてあまり語っていないことが多い。むしろ拒否しているように見えることもあるし、こっちが聞きたいことが資料や記録として残っていないまま亡くなっているケースもあるように思う。

そもそも画家にとって、「言葉」の捨象力に拒絶反応があるのは通常運行
もちろん、作品は作者から離れて、自律した存在であるべきだとは思うのだけど。

ーー
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先日まで羽黒洞で開催されていた「抒情の画家- 佐熊桂一郎・古茂田杏子 二人展」の佐熊桂一郎も、作家目線からは本当に面白い作家。このまま忘れられていくのはしのびなく、絵や作家にまつわることを筋立てて語ってしまいたいという欲望が抑えられない時がある。

人や作品なんて、一貫性をもった言葉で表せるはずがないのにね。 

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これが佐熊桂一郎特集が13頁も掲載された『みづゑ』1971年4月号だ!

もちろん、文脈の依存度が高い作品もあれば、低い作品もある。私はドアカデミックな現代美術をフォローしてきたわけではないし、骨とう品や物故作品の中で活動してきたから、言葉から離れた物の行き先に関する一種の無常観(?)がないわけでもない。

なくなるものがあるからこそ、今あるものに注視できるのだから。

うーん(-ω-;) まあ、いろいろ資料を集めてみてから考えよう。

ーー

最近読んでいた本の訳者後記より。

「要約からは多くのものが抜け落ちる……それ自体としてはけっして間違いとはいえない要約からは本書を本書たらしめる『何か』が抜け落ちる」

大概これで、私は人をがっかりさせている気がする。

それにしてもこの本の説教、ささるな~人物や作品の概説なんか、一言も書けなくなりそう。

ニーチェと悪循環 (ちくま学芸文庫)

ニーチェと悪循環 (ちくま学芸文庫)

 

 

そして、ジンメルに続いてまたもや論述しない袋小路タイプの思想にはまる泥沼。今まで自分がこういうのが好きだって気づかなかった。。