展示終了とこれから / SF、ショーペンハウアー、ジンメル、最近の読書。
羽黒洞でのワークショップと小展示、今回も無事終了しました。
3日間で刷った回数は、100枚を優に超えています。沢山の方々に制作していただき、うれしかったです。支えてくださる皆さまに、感謝いたします。
これから秋にかけて、藤沢市のギャラリーでのグループ企画、京橋・TーBOXで個展を開催予定です。
いつも好き勝手やってはいるものの、企画してくださる方の厚意にもこたえられるよう、鋭意制作しております。
夏の読書は、飲み屋の顔なじみに教わったSF話題作『三体』が超超衝撃の面白さでした。
「宇宙は空っぽの大宮殿で、人類はその宮殿の中に、たった一匹だけいる小さな蟻。」*1
こういう表現がまた鳥肌もの。ちっぽけな地球文明にいる蟻の叫びが、違う銀河系の苦しみと共鳴する……!そんな壮絶な苦の物語で、この宇宙レベルの限界状況、まじハンパないっす。
はやく続編の翻訳が出てほしいー
「苦」といえば。
なんだかブログによく載せるウェルベックの小説ですが、今度はウェルベックによるショーペンハウアーの注釈書が出たという。
たしかにモロな取り合わせだな!と盛り上がりましたが、中身は思いのほか普通かな?
ウェルベックによれば
「彼(ショーペンハウアー)の哲学思想の核、真に革新的な原理は、概念の領域には属していない……むしろ反対に、彼独自の直観のうちにあり、その本質的な性格は芸術的なもの」(67頁)
確かに、このショーペンハウアーという人は、「芸術を哲学している」わけではなくて、「この人の思想自体が本質的に芸術」なんですよね。なのに、哲学思想としても存在する。そこがすごいところ。
ここ何年か、この著者の先生の講義を聴講しているので、やや洗脳されているのかもしれませんが(!)このウェルベックの内容と通じていて、且つこちらが圧倒的に詳しいのでおすすめします。
ーー
ウェルベックは、ショーペンハウアー思想を「元気が出るペシミズム」と考えているらしい。
ショーペンハウアーは、実に当たり前なこと、たとえば「この世の中ってけっこー絶望的だよね!おぞましいよね!」という真実を、とてもフランクに語ってくれる。
「悲観主義」って言葉に似つかわしくない、妙に軽快なところがあって、不思議と共感しやすい。スッキリさせてくれるところもあるかもね。
(そこはやっぱり客観的な論証による効果なのかもしれないけども)
ーー
あとは何かあったか。
阿閉吉男訳、ゲオルク・ジンメル『戦争の哲学』をネットで買って読みました。
相変わらずこちら方面はたくさん読んでいます。
いつも酒盛りで、私のジンメルファントークに付き合わされている友人連には、まだまだ迷惑がかかりそう (^^)
戦争の「効能」を謳いもするこのエッセイ集。
今じゃ炎上する内容だからなのか?引用されているところをあまり見かけません。
著作自体は、第1次世界大戦終結以前のものですが、日本では1943年に翻訳が発行されていて、初版5000部刷られているもよう。
まさにアジア・太平洋戦争の戦況悪化の最中に、どんな風に読まれたのか?気になりますね。
収録されている「文化の危機」*2というエッセーなどは、特にこの人の並外れた所がよく出ていると思う。
ジンメルは『貨幣に哲学』という著作で、万能なメディアとしてお金を分析したことが功績としてよく知られているのですが、この文章はそこから地続きで論じられている部分がまたいいです。
ジンメルの主な指摘は、戦時体制はいきすぎたマネーゲームをご破算にしてくれる効能がある(!) ということ。その論理展開はかなり圧巻なのですが……率直な感想として、あまりにも代償が大きすぎるわりに、2度の世界大戦を経ても、お金問題はリセットどころか、高度な金融経済と格差問題が継続中。これ、どうかね。とも思ったり。
よく考えてみると、現代の「戦争」は革命の手段ではなくなっているけれど、実はずっと続いていて、誰もが巻き込まれてしまっているのかもね。
戦争も文化(形式)となる。と、そこでジンメルなら言うかもしれないな 🙄